第23回全外教セミナー・徳島集会が終わりました

第23回全外教セミナー・徳島集会が盛況のうちに終わりました。

当日は、事務局長の基調提起の後、全国在日外国人生徒交流会の卒業生たちや在日コリアンの保護者、生徒交流会の世話人をしている高校教員によるパネルディスカッションがおこなわれました。

途中でおこなわれた「プチ交流会」では、いつもの交流会さながらに「名前のこと」「言葉のこと」について、それぞれの経験や意見が活発に交流されました。

会場からも「とても有意義なセミナーだった」という感想が多数聞かれました。

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今号の巻頭言より

必要な情報を理解できる言葉で伝える努力を

先日、私の勤務校の生徒が交通事故に遭い、亡くなりました。生徒のご両親は外国出身で、ご両親が病院に到達した後も警察は「不要な誤解を避けるため」として、通訳の方がいらっしゃるまでは詳しい状況説明を控えました。その間、ご家族の怒りと悲しみはさらに募ったと聞いています。先月11日以来、私たちの心は急流に流される木の葉のように、激しく動揺しています。そのなかで少しでも多くの正確な情報を得ようと努め、徐々に平静さを取り戻しつつあります。日本語が分かる人は、これができます。
二年ほど前、中部電力浜岡原発への見学ツアーに参加しました。専門家と言われる人たちから「原子炉はどんな地震でも絶対に揺れない安定地層の上に建設されているから完璧に安全です」と何度も説明されました。私は挙手し、「放射能漏れなどの緊急時、日本語が不十分な外国籍住民に対してどのように必要な情報を提供する計画なのか」と尋ねましたが、全く考えていないという返事を受けました。
相手が警察にせよ原発にせよ、無為無策を非難するのは簡単なことです。しかし私は、むしろ自己を省みることが大切だと考えます。必要な情報をできるだけ速やかに提供し、不安を取り除くことは、社会の様々な場面でそれぞれの立場の人が為すべきはずです。もちろん、外国につながる児童・生徒が在籍する教育現場でも。

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今号の巻頭言より

本当に必要なものは

昨年末、長野県の中学生たちがNIE(新聞を素材に進める学習)の実践として、『沖縄新聞』を作成しました。沖縄に住む人たちと他県民との間には、米軍基地に関して「温度差」が大きい、と知り、自分たちに何かできることはないか話しあい、新聞をつくろうと決めたということです。沖縄の中学生たちとのやりとりを通して、長野の生徒たちは遠く離れた地の人々の心を知り、沖縄と長野との深いつながりに気づきました。
新聞は12ページにおよび、基地だけでなく多岐にわたり沖縄の真実を追求しています。大人たちの関わりもあっただろうけども、たくさんの生徒たちがそれぞれ分担して記事を書いた様子が想像できます。社説ならぬ級説では、中東有事の際には軍用機がカラになる米軍基地が「抑止力」となるはずがない、と明確に判断しています。
外国人教育に携わる人たちは、外国につながる生徒たち本人にばかり目を向けがちですが、教育制度や受け入れ体制を代えればすべて解決する訳はありません。かれらを取り巻く、圧倒的多数を占める日本人生徒たちが外国人生徒に向けるまなざしが変わらなければ、真の「共生」はあり得ないはずです。
※『沖縄新聞』は、沖縄県の地方紙『沖縄タイムス』サイトで読めます。

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今号の巻頭言より

外国につながるひとの「名前」

先日、地域の交流会に参加しました。テーマは、外国につながる人の名前です。私が住む地域は全国平均の2倍ほどの割合で外国籍者が在住し、当然のこととして、国籍が日本でも外国にアイデンティティを持つ人が少なからず生活しています。
全体会で発言した人たちはみな韓国朝鮮につながる人たちで、10代から30代の比較的若い面々でした。それでも、暮らしてきた地域、世代、環境によって「名前」に関する経験は多種多様に及び、一言で括ることは不可能と思われました。現在本名を名のっているか、それとも通名を使用しているかについても皆さんの判断・決定はわかれていて、私たち聴衆は、それぞれの方たちの決断を掛け値なしに受けとめるしかないと強く感じました。むろん、誰もが自分の名を隠さずに生きることができる社会こそが理想であり、そうでない状況は有ってはならないものです。しかし残念なことに差別の歴史は脈々と受け継がれていて、親が子どもを思うが故に、そもそも本名とは何か、何が通名なのか、在日年数を重ねるほどに判然としなくなっています。
翻って考えるに、日本社会の「国際化」が進んでいると言われるなか、その「国際化」の最先端を図らずもになっている「国際結婚」の家庭を、日本社会はどれだけ支援できているか、疑念が高まります。問題の本質は国籍などという外面的なものではなく、個々人の自己是認そのものです。それが最も見えやすいのが「名前」です。隠さねばならない「本名」やら使えてしまう「通名」やらが選べる間は、この国に住む人たちに心の平安が訪れることは決してなかろうと思うのは、間違いでしょうか?

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今号の巻頭言より

度重なるいじめ事件

昨年秋、群馬県桐生市で起きた、母親がフィリピン人であることを直接のきっかけとしていじめられ小学生女児が自殺した事件は記憶に新しいところですが、同様の事件が再び起きてしまいました。
先月末、神奈川県小田原市の中学校で、父親が韓国籍であることから、クラスの複数の男女生徒からからかわれている1年生女生徒が、音楽室でそのうちの一人の女子生徒に工作用小刀で切りつけ、けがをさせました。「小刀を見せればいじめをやめる」と考え、小学生のときに授業で使っていた小刀を持ってきたのだが、座席をめぐるトラブルでかっとなり、とっさに切りつけてしまったようです。警察はこの非行事実を児童相談所に通告しました。小田原市教育委員会は記者会見のなかで「言葉によるからかいはいじめの一部」と述べましたが、事件のあった中学校の校長は「いじめという認識は持っていない」と語り、またもや教育現場の事実認識のあまさが浮き彫りになりました。担任教員がいじめに気づいたのが昨年10月ごろで、12月には今回けがをした女生徒とその母親、担任の話し合いが持たれたと事実があったにも関わらず、です。
誰かをいじめても「それはいじめではない」と認定してくれる校長のもとなら、安心していじめを続けられそうです。この校長はいったい誰を何を護ろうとしているのでしょうか? おとなに護られず安全な生活を送れない
子どもはまるで、戦場に取り残された孤児と同じではないですか?

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今号の巻頭言より

それを「プライバシー」と片づけて良いのですか?

つい先日、某高校の生徒と話していたときのことです。「私、パスポートが無いんです」「えっ、家族できみだけ?」「いえ、母と私です。弟は日本国籍になっています。それで領事館に行ったのですが、母は再発行できました。私は、写真の赤ちゃんが私だと証明できないという理由で、再発行できませんでした」「きみ進学希望だよね?どうするの?」「どうしましょう」ちょっと調べたところ、簡易DNA鑑定をおこなえばつつがなく決着する様なレベルの話だそうなのですが、問題は別のところに生じていました。この生徒の担任に声をかけ、事情を伝えたところ、「学校としてどこまで関われるものでしょうか。これはプライバシーですねよ」との返事でした。プライバシー。そうなんだろうけども、これを放置するとこの子は居場所を失ってしまうんだよね。なのに即座に「逃げの一手」を打つこの人は、いったい…。
その後管理職に相談したら「今すぐ対応するように」と指示されたようだけれど、ちゃんとやってくれるのでしょうか。通りすがりの私が動くよりは、生徒のすべてを把握しているはずの担任に期待したいと思うのは間違いでしょうか…?

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身近な言葉を疑ってみよう

外国につながるこどもたちと日常的に付き合っていると、何気なく日本人が話す言葉の端々が気になって仕方のないことが多々あります。例えばその一つが「入籍」という言葉です。
この言葉は平生、「結婚」とほとんど同じ意味合いで用いられていますが、専門的な法律用語です。誰かの戸籍に誰かが入ることを指します。日本国籍者は20歳になれば、親から独立した自分の戸籍をつくることができます。自分の戸籍に自分が入る、これも入籍です。戸籍の筆頭人の配偶者になることだけが入籍ではないのです。さらには、夫婦間に子どもが生まれた場合、子どもは親(筆頭人)の戸籍に入籍する、といった次第です。当然、誰かが養子に迎え入れられることも入籍です。
すでにお分かりかと思いますが、「入籍」するのは日本国籍者に限られます。外国籍者は戸籍を持たないので、誰かの戸籍から出たり入ったりはできません。しかし、外国籍者と日本籍者との婚姻は、役所に届け出れば成立します。つまり、入籍=結婚と考える風習は二重に間違っているのです。ある時、南米出身の芸能人が日本人と結婚した際、テレビが「入籍」の語を用いたことがありました。その芸能人は現在では日本籍を有しているようなのですが、結婚当時もそうだったかは分りません。
日本で長く暮らしている外国につながる子どものなかには、自分が外国人なのか、それとも日本籍なのか知らず、親にも言えず悩む子がいます。16歳に達すれば分かるはずですが、その子が外国籍だった場合、日本社会の常識が自分を避けて通り過ぎる現実に傷つくことがあるかも知れません。教育には既成の文化を強制する性質が否応なくあるのは事実ですが、間違った常識、子どもの実態を無視したものの言い様は絶対に避けたいと考えます。

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いつまでこんな差別を続けるのか

すでにご存じかと思いますが、10月下旬、群馬県桐生市に住む小学校6年生女児が自宅で首つり自殺しているのが発見されました。新聞報道上の父親談によると、この生徒は2008年10月に愛知県名古屋市内の小学校から転校したのち、フィリピン人である母親が授業参観に出席して以来、複数生徒からいじめを受けるようになったと言います。両親は学校側と10回以上にわたり相談したが具体的な解決策の提示はなく、中学校入学とともに転居することを考えていた矢先の自殺だったそうです。
報道はさらに、学校長はいまだにいじめの認識が無く、そのことについても遺族の失望がつのる様子です。インターネットの書き込みでも、「群馬は関東地方のなかでは信じられない程閉鎖的だからこんなことが起こるのだろう」といったあきらめの声も聞こえてきます。
数年前、私が暮らすまちでも同じような差別事象が発生し裁判になったのですが、当時市教委でいじめを認定した担当の方とその後お話しする機会がありました。彼がそのとき語ったのは、「いじめ、民族差別の話を聞いたとき、私は悔しかったのです。子どもが子どもをその出自により差別する、これでは私たちの社会は50年前と何ら変わりが無いではありませんか。私は日本人として、こんな日本を変えたいのです。」とのことでした。
私たちがすべきことはただ一つ、すべての子どもたちがいまいる場所で、十全な自己実現を達成する手助けをすること、これだけです。子どもたちの権利を保障しない大人たちに対して、私たちはこれまで以上に厳しく対応しなければならないようです。

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秋は情報が少ない季節ですが…

ようやく秋らしくなってきました。外国人教育に関する情報は毎年、夏を越えるとぐっと少なくなります。各種イベント実施時期の狭間に当たるようです。

だが一方で、学校では運動会・体育祭や文化祭、秋の遠足、修学旅行など、ある意味で生徒に負担がかかる行事が目白押しです。外国につながる子どもたちは、学校に馴染んでいるでしょうか。夏休みが明けても登校しない子はいないでしょうか。

この時期、教員も支援する大人もちょっと疲れ気味です。気がついたら…といったことが無いように、子どもたちの様子には常に意識を向けましょう。

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