福岡安則です。
12月に,ゼミの大学院生の黒坂愛衣さんとの共著(主体は黒坂さん,ぼくはコメンテーター)で『黒坂愛衣の とちぎ発〈部落と人権〉のエスノグラフィ パート1 部落へ飛び込む』『パート2 出会い,ふれあい,語らい』(創土社,各1800円)を出しました。
読んでいただいた方からは,好評をえています。たとえば,こんな感じ。
社会学者の上野千鶴子さん
《ライブ感が伝わってきます。メールの交信記録をまんまフィールドノートにしてしまうという本のつくり方もあるのか,と虚をつかれた思いです。》
解放新聞編集長の笠松明広さん
《いい本がでました。これを読んでもらえば,部落にたいする偏見はなくなるでしょう。》
社会学者の井上俊先生
《読みはじめたらとまらなくなり,翌朝起きられなくて会議に遅刻しました。》
社会学者の細谷昂先生
《福岡さんは,こういう教育実践をしておられるのですか。感動しました。》
部落解放同盟栃木県連の戸田眞さん
《中学生日記みたいだね。晩酌の肴にちょうどいいよ。》
猿舞座座主の村崎修二さん
《激写です。ほめてあげてください。》
社会学者の長谷川公一さん
《新しい言文一致体だね。》
2002年秋より,黒坂愛衣は、部落解放同盟栃木県連合会事務局でアルバイト兼フィールドワークをはじめ,いまなお続行中です。県連での日々の経験を,じぶんの言葉で,日記のように書き綴った「エスノグラフィ」が,指導教官である福岡安則先生との共著のかたちで、このたび,本になりました。
**本書の特徴**
この本について,登場人物たる事務局のひとたちは,「県連の暴露本だ!」と冗談めかして言いますが,それを,戸田眞事務局長はこんなふうに表現しました。
「外側から『部落』を覗いてやろうという,その,覗き心をくすぐるような暴露本じゃあ,ないんだよな。この本で暴露されてんのは,栃木の『部落民』性がどうなってるとか,そういうんじゃなくて,俺らひとりひとり,《個》が暴露されてるんだ」。
この指摘はズバリ当たっていて,この本には,解放運動に参加するなかで出会ったひとびとの具体的な姿が描かれています(これを「暴露」という言葉で表現されるのには,弱ったなあ、と思う)。部落出身のひとも,部落出身でないひとも登場します。
わたしは,ひとりひとりまったく違う,具体的な《個》の姿を知ってもらうことこそ,部落差別をなくす一歩になる,と信じています。
それからもうひとつ、本書の特徴は、フィールドワークの実際――というか「舞台裏」――も、隠さず表に出していることにあります。これは福岡先生の当初からの方針でありました。
県連にアルバイト兼調査の受入れをお願いし、現場に「とびこむ」ところからはじまります。ワケガワカラナイ状況から次第に周囲を理解していき、本にする許可を得るために走り回り、とちゅうで息切れがしてノートを書かなくなったり、書き溜めたフィールドノーツが「訂正、訂正、訂正の嵐」にみまわれたりします。
じぶんのダラシナサを露呈していて、恥ずかしくも思いますが、こうした「舞台裏」がみえることも、本書の魅力であると思っています。
黒坂愛衣さんの自薦文
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判型 |
ページ数 |
頒価(円) |
重さ(g) |
PART1 |
A5判 |
311p |
1800+税 |
355 |
PART2 |
A5判 |
294p |
1800+税 |
335 |