全朝教が『在日外国人教育Q&A』を出版してから3年がたちました。しかし、このわずか3年の時間の経過の中での在日外国人教育をめぐる状況の変化は大きく変わりました。
在日コリアンをめぐる状況について言えば、日本籍コリアンの増加傾向がさらに進行しています。学齢時の在日コリアンの主流が3世から4世に移り、日韓スポーツ交流や文化交流が盛んになっていく中で、従来の「差別と排外の日本社会」という認識だけではとらえきれない若者の意識の変化も進行しています。一方、「新渡日」の外国人をめぐっては、その数のますますの増加と多様化の進展、これに対する日本社会の民間や行政の対応の一定の広がりです。
こうした状況をふまえて、全外教はあらたに『一問一答 在日外国人教育』を出版しました。
この小冊子は、在日外国人教育の概説書でも学術的な理論書でもありません。筆者はすべて奈良県内の教育現場の教員です。在日外国人教育の現場で突きあたる疑問や「こんなことがすぐにわかれば…」と思う事柄を設問として設定し、さまざまな資料を調べて、その解答を書きあげました。在日外国人の子どもや親と接した時、多くの教員が「これは何とかしなければ…」という思いを抱きます。「何とかしよう」として動き出した時、一定の知識が必要です。「他によく似た事例はないのか」「どんな先進的なとりくみがあるのか」「法律や条令はどうなっているのか」等々、そんな時、この本の目次を見てほしいと思います。「何とかする」ために必要な知識が、きっと見つかると思います。そのような在日外国人教育の最前線で、すぐに役立つ「手引書」のつもりで、執筆・編集にあたりました。
現在の日本は、外国人の急増という実態が先行し、教育や行政の対応が遅れています。また、その対応も地域や学校によって大きな落差があります。この小冊子が『在日外国人教育Q&A』同様、教育現場で、外国人とともに生きていくことのできる地域社会・学校をつくり、「差別と同化」を迫る日本社会ではなく、「多文化と共生」の日本社会をめざして在日外国人教育にとりくむ現場教員の手引書として役立つことを期待します。
もくじ
発刊にあたって
在日外国人問題とは
Q1 日本にどれくらいの数の外国人がいるのですか。
Q2 在日外国人が生活する上でどんな問題があるのですか。
Q3 外国人が増えるということは、日本は「単一民族国家」ではなくなるのでしょうか。
在日コリアン
【歴史】
Q4 どうして日本に住むようになったのですか。
Q5 日本に来た朝鮮人はどんな生活をしていたのでしょうか。
Q6 日本の敗戦後、なぜ帰国しなかったのですか。
Q7 在日コリアンの法的地位はどのような変遷をたどってきたのですか。
【戦後補償】
Q8 戦後補償とはどんな問題ですか。
Q9 「従軍慰安婦」問題について教えてください。
Q10 朝鮮人BC級「戦犯」問題とは、どんなことですか。
Q11 在外被爆者への補償はどうなっているのですか。
【現状】
Q12 在日コリアンへの差別の現状について教えてください。
Q13 在日コリアンに対する差別語にはどのようなものがありますか。
Q14 在日コリアンによる運動やとりくみについて教えてください。
【教育】
Q15 今、民族学校はどういう状況にあるのですか。
Q16 在日コリアンの子どもたちが日本の学校に通うようになったのはなぜですか。
Q17 日本人の子どもと同じように扱ってはいけないのですか。
Q18 「本名(民族名)を呼び・名のるとりくみ」とは何ですか。
Q19 在日コリアンの子どもたちが集う場は、なぜ必要なのでしょうか。
Q20 在日コリアン生徒の進路はどうなっていますか。
Q21 どのような就職差別撤廃運動がありましたか。
Q22 公務員採用での国籍条項の問題はどうなっていますか。
Q23 文科省は、なぜ在日外国人を教諭採用しないのですか。
Q24 就職に関するセミナーのようなものはありますか。
Q25 いまの在日コリアン高校生の意識はどうなっていますか。
「新渡日」の人たち
【渡日の背景】
Q26 「新渡日」の人たちはどうして日本に来るようになったのですか。
Q27 かつて日本人が海外に移住していった例はないのですか。
【現状】
Q28 日本政府は、新たに渡日してきた外国人をどう受け入れ、どのような支援をしていますか。
Q29 「新渡日」の人たちの仕事の状況はどうですか。
Q30 外国人は家探しに苦労すると聞きましたが、本当ですか。
Q31 医療や社会保障はどうなっていますか。
Q32 「新渡日」の人たちに対して自治体の対応はどうですか。
Q33 「新渡日」の人たちが日本語を学習する機関や、彼らを支援する市民グループなどの活動はありますか。
Q34 外国から企業に来ている研修生について教えてください。
Q35 難民の受け入れはどうなっていますか。
Q36 諸外国では、外国人の受け入れはどうなっているのですか。
【教育】
Q37 外国人は希望すれば誰でも日本の学校に入学できるのですか。
Q38 「新渡日」の子どもたちを受け入れるときにはどんなとりくみが必要ですか。
Q39 母語保障とはどういうことですか。
Q40 「新渡日」の生徒の高校進学や大学進学はどうなっていますか。
Q41 ブラジル人学校というのがあると聞きましたが、どんな学校ですか。
在日外国人の法的地位
【法的地位】
Q42 外国人に対する国の基本的な姿勢はどうなっていますか。
Q43 在留資格って何ですか。
Q44 外国人は日本の国外に追放されることもあるのですか。
Q45 外国人が入れられる「収容所」というのがあると聞きますが、どんな所ですか。
Q46 再入国許可って何ですか。
Q47 在日外国人が届け出ることを義務づけられている項目には、どんなものがありますか。
Q48 外国人登録証明書ってどんなものですか。
Q49 外国人登録証明書の常時携帯義務って何ですか。
Q50 在日外国人の中に、外国人登録法に対して改善を求める声が多いようですが、それはどうしてですか。
Q51 外国人登録法に対してどのような運動がありましたか。
【国籍】
Q52 国籍ってどうして決まるんですか。
Q53 在日コリアンの国籍はどうなっていますか。
Q54 日本国籍を取ることをどうして「帰化」と言うのですか。
Q55 歴史用語の「帰化人」という言葉についてどうですか。
Q56 在日コリアンが将来もずっと日本で生活していくならば、「帰化」すればよいのではないでしょうか。
Q57 諸外国では外国人に参政権があると聞いていますが、日本では外国人の参政権はどのようになっていますか。
もっとよく知りたい人のために
Q58 全外教って、何ですか。また、府県外教についても教えてください。
付録 もっとよく知りたい人のために
A5判 160ページ
頒価 1000円