2021年5月18日
全国在日外国人教育研究協議会
会長 舟知 敦
私たち全国在日外国人教育研究協議会は、日本に住む外国につながる児童・生徒の教育が保障され、彼(彼女)らが周囲と共に健やかに成長できる学校・社会を目ざし、日本社会の排外と差別、同化と抑圧を克服する教育実践を創造し、 多文化共生の教育を確立することを目的として活動をしています。
政府は「少年法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」)を国会に提出し、現在審議しています。法案は18歳・19歳の少年に少年法を適用するとしながらも、刑事裁判の対象となる事件の範囲を拡大し、推知報道を解禁し、資格制限など更生を担保するための規定を除外し、刑罰化と厳罰化をすすめるものです。特に推知報道の解禁が教育現場に及ぼす影響は非常に大きいものがあります。非行の背景に貧困、虐待等の社会の問題がある中で、その問題を棚上げにして、少年のやり直しの機会を奪うもので、家庭裁判所調査官はじめ少年の矯正に関わる専門家も反対しています。
この法案が通った場合、とりわけ18歳・19歳の外国籍の少年にとっては深刻な事態になりかねません。法案によれば、少年が刑事裁判の対象となり1年を超える懲役・禁錮になった場合、現在審議されている「出入国管理及び難民認定法及び関連法の改正案」と併せると、外国籍の少年は退去強制となり、在留特別許可も認められない可能性が高まります。日本から生活基盤を奪われ、学校や職場から引き離され、国籍のある国に送られてしまう可能性が高まります。特に日本生まれや日本での生活が長い少年の場合、言葉や社会習慣の違う土地にいきなり放り出されることになってしまいます。
日本の国籍を持たないというそれだけの理由で、日本人の少年とは異なる深刻な事態を招くことになりかねません。
わたしたち全国在日外国人教育研究協議会は、多くの外国籍の少年が貧困や差別、いじめなどさまざまな困難のなかで、生きてきた姿を目の当たりにしてきました。中には法を犯してしまう者もいました。彼ら(彼女ら)にはやり直しの機会が与えられるべきだと考えます。日本で生活し、学習する機会を根こそぎ奪われてしまうことに憂慮しています。これまでも戦前、戦後の歴史の経緯のなかで中国等から来た少年たちが、温かく受け入れてもらうことができず、日本の社会や学校から疎外され、厳しい環境に立たされたことを忘れてはなりません。
政府は「少年法等の一部を改正する法律案」を撤回され、国会で慎重な審議をしていただくことを要望いたします。