はじめの頃の神道
寺院(お寺)と神社(お社)は、どこが違うのか知っていますか。仏様の姿をあらわした仏像が置かれているのが寺院で、神道の神様をお祭りする場所が神社です。
日本で初めて神道が生まれたのは3世紀頃で、この時代に朝鮮から倭(日本)にやってきた渡来人たちが持ち込んだ自然や月や星を神様とする宗教と、それ以前の渡来人たちが信じていた氏神を信じる宗教が結びついて生まれたと考えられています。今、韓国・朝鮮に聖なる場所を区切る注連縄(しめなわ・クムジュル)や、一族の墓を拝む場所の入り口にある鳥居の形に似た門が残っています。これらは、日本の神道の源が韓国・朝鮮にかかわりがあることを、想像させるものです。
渡来人と神道
日本に古くからある神社のほとんどは、朝鮮からの渡来人一族の守り神を祭ったものです。稲荷(いなり)神社は全国に約4万社ありますが、その本宮は京都の伏見稲荷です。このあたり一帯は渡来人の秦氏が5世紀ごろから開発し、711年に伏見稲荷をつくり祭りはじめました。また、八幡神社という名の神社は全国に約4万社ありますが、その本宮は大分の宇佐八幡神宮で、やはり渡来人の秦氏の氏神としてつくられたものです。古代の豊前地方(福岡県の一部と大分県)の人口の85パーセントが秦氏一族だったという説もあります。
日本に伝わる昔話や神話にも、神道と渡来人の関係を示すものが多数あります。その一つに、日本海に近い、兵庫県の北にある豊岡一帯に伝わる伝説「あめのひぼこ」の話があります。その伝説では、朝鮮からやってきた「あめのひぼこ」という王子が、鉄の道具を使って、泥の海だった豊岡一帯の水を日本海に流し、稲作農業ができ人が住める豊岡盆地を作ってくれたというのです。そして、その「あめのひぼこ」様を神様として、このあたり一帯の神社でお祭りするようになったというのです。福井県敦賀市にある気比神宮(けひじんぐう)はじめ、新羅[しらぎ・古代朝鮮の国の一つ]の王子であった天日槍(あめのひぼこ)を祭った神社もたくさんあります。また、全国の天満宮や天神さんも、朝鮮からの渡来人の子孫である菅原道真(すがわらのみちざね)を祭ったものです。
「ワッショイ、ワッショイ」という神社の御神輿をかつぐ時のかけ声が、朝鮮語の「ワッソ、ワッソ(おいでになった、おいでになった)」が変化したものであると考えている学者がいるのも、神道のはじまりと太古の朝鮮とのつながりを考えてのことなのす。
仏教の伝来
6世紀のはじめに、百済(くだら・朝鮮の西南部)の武寧王は倭に五経博士(儒教を学んだ知識人)を送り、新しい倭国づくりを指導させました。
また、武寧王の後をついだ聖(明)王が、6世紀の中頃に仏像と経典(お経を集めた書物)を倭に送り、渡来人の蘇我稲目(そがのいなめ)がこれを自宅に安置しました。
その後、しばらく仏教を受け入れるかどうかの争いがありました。結局、百済と仲良くし仏教を受け入れようとする蘇我(そが)氏側が勝ち、最初の寺である法興寺(飛鳥寺)をつくることになりました。そこで百済から、僧侶(お坊さん)や寺院を建てる技術者に来ていただくことにしました。当時、倭国には僧侶はいませんし、昔から倭国にやってきていた人たちの技術では、新しい寺を建てることはできなかったのです。
593年には飛鳥寺の塔に仏舎利(お釈迦様の遺骨)を安置する儀式が行われ、蘇我馬子(そがのうまこ)ら、倭国の中心となる人たちは全員、百済ふうの衣服に身をつつんで参列しました。
飛鳥寺に続いて、蘇我氏の一員である聖徳太子が奈良の斑鳩(いかるが)に法隆寺を、大阪の難波に四天王寺を作り、渡来人の秦河勝(はたのかわかつ)は京都の太秦(うずまさ)に広隆寺をつくりました。広隆寺の木造弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)は現在、日本の国宝第1号に指定されている、朝鮮にしかない木材を彫刻した仏像です。
これらの寺院は、柱を基礎となる石の上に立て、それぞれの材木を丁寧に組みあわせて色に染め、屋根は瓦でおおった大規模なものでした。これらの技術のすべては、渡百済等の様式を真似たものでした。また、門、講堂、五重塔などの建物の配置も、壁に描かれた壁画も、すべて渡来人の技術によってつくられました。そして、仏教はこの後、国に保護されてどんどんと広がっていきました。
このように、飛鳥時代の文化は、ほとんどすべてが朝鮮からやって来た渡来人や、その子孫たちがつくりあげたものだったのです。
* * 考えてみよう、調べてみよう * *
@あなたの住んでいる区・市や郡にある神社で、名前や祭り神からみて、朝鮮からの渡来人と関係するものがいくつあるか調べてみよう。
A庶民が竪穴式の家に住み、大王の宮殿でも板屋根だった時代に、仏教のお寺は、なぜそんなに豪華なつくりのものが建てられたのだろうか。
B「空から見た四天王寺」と「二つの半跏思惟像」の写真を見て、気が付いたことを全部出してまとめてみよう。